川上弘美『風花』を読んで感じること
今年新しく出会った作家の中で一番ハマった川上弘美さん。
まだブログを初めて比較的間もない頃に、『センセイの鞄』の感想を書いたところ、すごくたくさんの友人達から「私も前に読んだよ」と言われ、遠くに住んでいるのに手に取る本が同じってなんだか嬉しいなぁと感じた。
もちろんとても良い作品だし彼女の代表作のひとつ、というのもあると思うけれど、それでも普段全然別に暮らしているのにおんなじものをいいって思う価値観というか、電話しようと思ってたらその友達から電話が来たような『つながってる感』を感じてうきうきした気分にもなった![]()
その後、たくさんの川上作品・エッセイを読み、心が暖かくなったり、せつない気持ちになったりさせてもらったが、最近『風花』という作品を読み終えたのでその感想を少し![]()
主人公は「のゆり」という女性。結婚している30代前半の女性なのだが、少女の様にナイーブでどんなグループの中にいても「おとなしいね」と言われそうなタイプ。冒頭からそんなのゆりさんが、夫に3年愛人がいて、それを夫に公言されてしまったのに話し合う事を避け、怒り狂わずに淡々と暮らしているという状態から始まるもんだから、「あるあるこんな話し」とも思えず、誰に感情移入していいかわからずとりあえず読み進んでいった。
ところがこののゆりさん、全280ページ程のこの本の中で、ものすごーく変化していくのだ。
最初は、新幹線改札口でどっちの切符(乗車券OR特急券)を入れていいかおろろしていると、後ろのおっちゃんに舌打ちされて「こわい・・」と思ってしまうような大人ずれしていないのゆりさん。年が近い従兄弟のような叔父と温泉に行って、露天風呂の壁に「死んだら最後」と(いたずらで)掘り込んであるのにひとり気づいてしまうのゆりさん。何かユニークな感じもする。いつも人混みをささっと通りすぎるように生きてきた人なのに、歯科医院で働き始めたり、医療事務の講座で知り合った男の子と微妙な距離で付き合っていく(といってもお茶したり)うちに、すこーしずつ変化し始めていく。
大して親しくなかった会社の先輩から、強引に沖縄旅行に誘われ(「子供いないから大丈夫でしょ?」って言われて)、完全に先輩の一方的なペースでつき合わされ、話しを聞かされ、自分と夫との危機を打ち明けようとしたら無視され・・・と、あ~こういう都合良くおとなしい相手を利用する女性っているなとげんなりするところなのだが、彼女はその先輩を観察し、自分を冷静に見つめる時間として過ごしていく。
その後夫から「やっぱり別れたい」と言われてからののゆりさんがすごい。一見消極的で、おとなしい女性、という外側の印象は変わらないのだが、堅い信念の元、「自分の心の底で思っている事を、相手に伝える」と決心して行動を夫に対して起こし始めるのだ。それがホントに可愛くて。まずは相手から顔をそらさずに自分から気持ちを伝える。相手が引いてしまっても「頑張れ頑張れ」と心の中で励まし、アイロンを力強くかけたりしながら意志を伝え続ける。そして、そんな自分を「ろばの様に頑固」と思う自分。要は貴方が好きだから絶対別れない、と言い続けるのだ。これって思春期の少女が片思いの人に死ぬ気でアタックしている感じですよね。
でも後半にいくに従って、些細な事にはおびえない、たくましさを内に秘めたのゆりさんは、これからの人生の選択に対しても自分の意志で、自分の決断をする。少し意外な結末。
ピュアな人が強くなると、真っ直ぐで堅ーい決断をするから、相手はもう勝てない。自分は自分の家族に対してこんなに誠実に接してきたかな、って考えさせられる位真っ直ぐなのゆりさん。最近「婚活ブーム」とかで結婚する為の過程ももちろん大変なのだけど、結婚した人と本当に家族になるって思った以上に大変なのかもしれない・・・と思ってしまった。今頃何言ってるのって感じなんですけどね。ちなみに私の中でののゆりさんのイメージは、ちょっと年が若いけれど蒼井優ちゃん。ちょっとおっとりしているけれど芯の強い目をしているところが合っているかなあ・・と。
もちろん人と誠実に付き合う姿勢は身内だけでなく、自分がかかわる全ての人間関係に言えること。来年も正直に、そして明るく生きていきたいと思います。それでは皆様よいお年を![]()
<年末の花壇>
ビオラが咲き揃ってきましたよ♪
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コメント
川上サンの小説の中では、やっぱり、センセイの鞄が好きです。この小説は後世まで残ると思います。蛇を踏むは、いつも途中までしか読めません。何が何やらさっぱり分からなくて・・・風花は、ちょっと恐そうな感じがしてまだ読んでいませんが、今度図書館で借りてみようと思います。
投稿: センセイの鞄は烏賊臭い? | 2009年1月 1日 (木) 14時44分
「先生の鞄は烏賊臭い?」さん、新年早々コメントをありがとうございました

「蛇を踏む」は私もまだ読んでいないのですが、川上さんの作品は、統一感があるようで、ひとつひとつすごく違う世界を持っていますよね。
私も今のところ「センセイの鞄」「古道具中野商店」の世界に一番魅かれています
投稿: ソックスモンキー | 2009年1月 5日 (月) 10時22分