79歳と10歳の歌舞伎役者、勧進帳に挑む。
日曜日の夜だったか、偶然NHK教育テレビでとっても興味深い番組を観た。
人間国宝で、歌舞伎界最長老の中村富十郎さんと、その息子が『勧進帳』に挑む姿を追ったドキュメンタリー。
この方、私が観に行った最近の歌舞伎でも、いつもちょっとしか出ていらっしゃらず、同じ長老でも坂田藤十郎さんへの注目の方がかなり強かったので、正直「えっとどんな方だったかな・・・」という印象。
見始めて少しして気づいた・・・御歳79歳で、息子・鷹之資(タカノスケ)君は10歳というではないですか。あーそういえば、ずいぶん前に、ワイドショー的な話題でお名前を耳にしていたっけ。
すっごい年の差婚と、高齢パパの話題だった。
よくある庶民の話題として、岡田真澄に代表される「60代でパパになった人」として紹介されていた、あの富十郎さん。つまり69歳の時のご長男が今10歳に成長したということね。
富十郎さんは、今回13年ぶりに弁慶を演じるにあたって、息子を義経として一緒に舞台に立つという。
79歳になって、あの長台詞とハードな立ち回りをするのというのもすごい情熱だと思うが、演出も自ら行い、今回は「能」の動きを意識して取り入れる試みもあり、更に息子を義経として立派に舞台に立たせるという父親としての使命もある。
インタビューを受ける鷹之資君は、ぽっちゃり顔の可愛い小学生という感じなのだが、受け応えがすごくしっかりしていて、聞かれた事に対する返答は、立派な若手の役者さんという感じ(10歳ですよ!)。
父の富十郎さんに対しては、やはりパパというよりは、尊敬しているおじいちゃん、という感じで接しているようで、勘三郎親子や幸四郎親子をテレビで見た時に比べると、甘え方も素直で可愛い。
番組の中では、本番までの2ヶ月位の稽古を追っていくのだが、「能」の大家の方(この方は83歳!)に直接動きをつけてもらったり、この10歳の子が、果たしてどれだけ恵まれた状況かわかるのか、逆に重圧になったりしないのかと、どうしても鷹之資君の表情ばかりを追ってしまう。
今回、この富十郎翁の挑戦には、歌舞伎界でも賞賛を込めて快くスター役者が共演をかってでてくれたそうで、弁慶とやりあう「富樫」には中村吉衛門、義経の家来達に市川染五郎や尾上松禄といった、すごいキャストだ。
歌舞伎は全員での稽古は2日位しかしないから、鷹之資君はやはりどう見ても「緊張
」という顔で参加している。
通しで動いてみても、やはり自分が向く方向を間違えてしまったり、とまどいながらも大汗かいて一人参加する子供・・といった感じで画面に映るから、こちらまで緊張してしまう。
富十郎さんは、弁慶を演じつつ演出もあれこれ指示出しをしているので、大いそがし。
そんな中で、鷹之資君の緊張やとまどいを察し、動きを間違わないようにするにはああしたら、これを合図にしたら、とお兄さん的に面倒を見てあげていたのが染五郎と、松禄。
TVに向かって思わず「さすが~」と言ってしまう程に、彼らは自分達の子供時代の経験を更に次の世代につないでいくところなのだ。
名門の家に生まれ、10~20代の頃から注目を浴び、プレッシャーを感じながら、30代半ばになった2人。二人ともいい役者さんになったな~と、見ていて感激してしまった。
梨園の家は、父から子へ、という伝承と共に、同じ歌舞伎界の中でのこんな風な斜め上からの愛ある指導で、また若い役者が育っていくものなのですね![]()
歌舞伎座での舞台稽古でも、能の大家の方からも、父からも指導を受け、そして染ちゃん達から励まされ、もう緊張感MAXの鷹之資君だったのだが、舞台当日の出番待ちの袖で、弁慶になったお父さんに「・・・・頑張る」と小さく言った瞬間に、こちらもじわ~っとなる![]()
そして本番も大成功。勧進帳は、最後に弁慶だけが花道に立ち、関所を振り返り振り返り、感無量で去っていくシーンで終わるのだが、花道にひとり立ち、「やりきった感」をにじませている富十郎さんに、「天王寺屋!」の掛け声と共に、「まだまだやれる!」の大きな声があがり、お客さんも大笑いの大喝采。こんなところが江戸っ子の「粋」なのかも。
ホント、10歳の役者も頑張ったけれど、この79歳の役者も頑張ったなー。歌舞伎ってやっぱり感動するなー![]()
最後に、化粧を落としている富十郎さんの楽屋に鷹之資君がやってきたところで、「ちょっと待っててね。一緒に帰りましょうね~」と優しく声をかけるパパの顔もとても素敵でした![]()
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コメント
残念ながら、その番組は観ていません
が、私なら、鷹之資くんの気持ちがびしびし伝わってきて、ドキドキしながら観たと思います。
無事に終わって、奥様もさぞほっとされたことでしょうね。
いつも歌舞伎役者さんの運動量(?)には頭が下がる思いです。富十郎さんは、79歳にして演出もされたなんて、それだけで、勲章ものですよ
投稿: くり | 2009年7月 9日 (木) 18時22分
くりさんの想像通り、富十郎さんの奥様(若いのに包容力のありそうな素敵な方です)は、本番の始まる前に既に泣いてらっしゃいました
鷹之資君にも「お母さんは見てるだけだからいいけどさ~」なんて、可愛い愚痴を言われるのを2ヶ月ひたすら笑顔で励ましてたんだから、そりゃ泣けますよね。
富十郎さんも、あんなに立派に演じてたのに、舞台袖に下がったら一気によたよたとなってしまって、別人のようでした。
体力的にも大変でしょうから奥様はこちらも心配だったでしょうねー。
投稿: ソックスモンキー | 2009年7月10日 (金) 16時11分