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旅先で観た「グラン・トリノ」

ハワイに滞在している時に、クリント・イーストウッド監督の「グラン・トリノ」を観た。

いくつになっても精力的に映画を作り続け、ちゃんとアカデミー賞級に仕上げるイーストウッド監督だが、私にとっては「マディソン郡の橋」の主演俳優として観たひと昔前の印象→「何だかシワシワになっちゃって・・・」という程度の人。

ジャック・ニコルソンとかモーガン・フリーマンとか、枯れ系では魅力的な俳優さんが他にいるわいな、という捉え方しかしていなかった私。

しかし今回、この作品を観て思った。わたし・・何て馬鹿。

彼は素晴らしい映画監督だったのですね

もう劇場公開されてからはずいぶん経つので、どんなストーリーかご存知の方も多いと思うが、これは朝鮮戦争に出兵した経験を持つ、超偏屈な爺様(イーストウッド)と、隣人であるアジア人一家との関わりを描いた作品だ。

アジア人といっても、アメリカにある程度の数がいてコミュニティが出来上がっている中国や韓国など先進国ではない。いわゆるマイノリティー、ラオスからきたモン族の一家だ。おばあちゃんなど何て言ってるか全くわからないのだ。

朝鮮戦争で自分達の故郷がめちゃめちゃになってしまったから、(皮肉な事に)アメリカに移民してきた、と孫が隣のプライドの高いアメリカ老人に言う。

前半はイーストウッドが本当にむかつく老人として、差別用語連発(ホントにいやになる位)しつつ「やめろやめろ、俺にかかわるな」と、身内からも近所からも嫌われ、孤独に暮らしている様子が、やや淡々と流れる。

そして並行してついつい関わってしまうモン族一家の不思議な生活慣習(食事や祭事)を写し出すので、それにもまた興味深々で見入ってしまう。そしてモン族独特の行動についつい微笑んでしまう。

隣接した隣同士の家は、外観はあくまで普通のアメリカの住宅なのに、これだけ人種も生活様式も違う人同士が住んでいるなんて感覚、日本人にはなかなかわからないですよね。

でもやはり人と人をつなぐのは、偏見やこだわりを持たない真っ直ぐな気持を持った若者だ。この家の女の子の孫が、英語も話せ(これは重要)、アメリカに溶け込もうと度胸を持って生きている姿勢が、徐々に偏屈な爺さんのペースを狂わせ、いつの間にかふところに入り込んでいく。

実際、結末を知ってしまうと、このように深く関わりすぎてしまった事が、お互いの人生を大きく変化させてしまったのかと思い、切ない気もするのだが、中盤爺さんが口では憎まれ口を聞きながらも、完全にモン族家族を支える存在になってしまうまでのエピソードの積み重ねがとても暖かい。

いちいち「孫を助けていただいたお礼に」と、モン族の女性達が大きなお盆にたくさんの食べ物を載せて、どんどん運んできちゃうのを、始めは目を白黒させながら拒絶していたイーストウッド老人が、何度も助けるもんだから、とうとう慣れてしまい、食べ物を「意外にいける」などと口にするシーンなどは、とてもキュートだ。

ただ、このストーリーは多分どう転んでも誰かが悲劇をかぶる結末になるんだろうな、と想像できる重苦しい問題がずっとベースに流れている。

それは一言で片付けてしまうなら、「人種差別」というものなのだが、人種だけでなく、貧困や荒れた世の中、色々な背景がマイノリティーの一家をより追いつめていっているように見える。

この作品を観た時に、南国別世界とはいえ同じアメリカの一都市に滞在している自分。

本当に、ここでもたくさん見かける白人のアメリカ人は他民族を差別したり、痛めつける事があるのだろうか?と思う程、外にでればみなニコニコ笑顔で、誰にでも優しく接する人種であるように見える。

でも実際、私が知らないだけで、世界中色々な場所で、このような差別で苦しんでいる人たちがいるのだろう。自分達が溶け込もうとしても絶対受け入れてもらえない壁を前に、腐ることなく生きていこうとするマイノリティー達の忍耐。

そして、戦争に行った事で素直に生きられなくなった寂しい老人が、人生最後の良心を、この縁もゆかりもない隣人に捧げようと、あまりにもストレートに行動してしまう正義感。

何でその結末・・・・と最初はただ切ないという気持ち。そして老人が選んだ選択が正しいと言えるかどうか、どうしても自分では結論が出ない。

ただ、他に方法があったんじゃないか、生きて寄り添っていく事こそが、隣人達が望む行動だったのかもしれないよ、と老人に言ってあげたい気持にはなる。

イチローも、最近達成した大記録の時期にインタビューをたくさん受けていたが、その中でもやはり渡米直後はだいぶ差別を受けたことを初めて口にしていた。

日本でのほほんと生活しているだけでは知らない世界。映画にはまだまだ教えられることがたくさんある。

そんなわけで、もうひと作品、「ミリオンダラー・ベイビー」も手に取ることにしたのであった。

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コメント

人は自分と誰かを多かれ少なかれ必ず比べてしまう生き物だから、嫌な話ですが、差別がなくならないのは仕方がないのかもしれないですね。
だからこそ、こうした映画等の媒体を通して、様々な差別の実態を知ることは大事なことなのだと思います。
そこから感じた怒りややるせなさ等から、自分の中の小さな差別の心を戒めることが出来るとおもうので
ミリオンダラーベイビーといい、チェンジリングといい、イーストウッドの作品は重さや辛さを通して、人間の芯の強い部分が印象に残るものが多いですよね。(でも、見終わった後はかなり精神的ダメージが大きいですが・・・

投稿: acco | 2009年9月30日 (水) 13時49分

accoさん、遅いレスでごめんなさいです。
深いコメントありがとうございます
「自分の心の小さな差別を戒める」ことがどんなに忘れやすい日常であるか、こんな映画を見ることで目が覚める思いです。
映画の捉え方については人それぞれですが、心の芯のところで受け止めたいと常々思っているので、感想を言葉にして公開するのも時々勇気がいります。
accoさんのコメントには「ちゃんと伝わってる」と確信できるものがあってとても嬉しかったです
チェンジリングも頑張って見るぞ!

投稿: ソックスモンキー | 2009年10月 2日 (金) 13時14分

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