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がっかり報道

今日は英会話の日だった。
水曜日に通っているクラスは、大学が開講している講座ということもあってテキストを使ったり、CDの通りに発音をさせられ(それもひとりづつ)思いっきり直されたり、たまにはミニテストもある。
まあ実際にはそれをするのは全体の半分位の時間で、あとは最近の出来事を話したり、先生の娘(ハーフの美人アスリート)の結婚式のDVDを見せてもらったりとふざけているのだけれど
今日行っている方は、例の英書「The Little Prince」の解読をすること以外に、数人ずつが毎週交代で何かトピックスを用意し話すことになっている。
今週は自分の番、という週は新聞の小さな記事(←誰かとかぶらないように)に注目して、少し自分で調べた事なども添えてそれを英語にしてカタコト話す・・・というちょっと準備が必要な作業だ。

そんなわけで週明けから割と新聞をよく読んでいたところ、何ともやるせない記事を発見。
それはちょうど1年前に私もブログに書いた二重被爆者・山口彊(つとむ)さんの事をイギリス・BBCが笑いの対象にした、というもの。

その記事やNHKニュースの報道によるとコメディ番組(日本でいうバラエティ?)「QI」という番組内で「The Unluckiest Man In the world」世界で一番不運な男、ということで広島・長崎の両方で被爆してしまったエピソードを紹介し、スタジオの出演者達が「93歳まで生きたのならそんなにアンラッキーじゃないんじゃないの」「でも彼はあまり楽しそうな顔をしてないね(写真を見て)」「空にキノコがふたつあるからね」などと軽口をたたいて出演者・観覧者達が笑い飛ばす、というような内容だった。

正直イギリス人の笑いのセンスがこんなにひどいものだったのかと怒りと悲しみとで、頭に血が上ってしまった。

山口さんの人生を知ったのは昨年ご本人が亡くなった直後放送された報道ステーションを観てのことだったけれど、今回英会話クラスで発表もしたいと思い、あらためて彼のことをインターネットで色々調べてみた。

山口さんは今でこそ戦争の語り部として大きな存在ではあるけれど、テレビにまで出るようになったのは最晩年の数年のことで、あとは戦争のあともサラリーマンとして普通に一生懸命生きてきたごく普通のひとだった。

29歳の時、3ヶ月間の広島出張の最中に原爆を落とされ、「これは大変だ」と大やけどをしながらも生まれてまもない息子と妻のいる長崎へ翌日急いで帰るのは当たり前の行動。

戻った長崎の職場で、上司に広島の惨状を説明している最中に窓の外の稲光を見て「ここにも同じことが起きる!」と気づいた山口さんをどうやったら「不運」で片付けられるんだろうか。

息子さんが60歳で突然ガンになり(乳児の時の被爆が原因)あっという間に死んでしまった事が、彼を「二重被爆者の語り部」として人前に出ることを決意しただけであって、決してBBCで笑われるためなんかではない。

90歳で国連に行きスピーチをしたり、ジェームズキャメロン監督が病床に会いにきた際に「私の役割は終わった。(核廃絶を訴える気持を)是非受け継いでほしい」と伝えた時の英語がすごく力強かったが、山口さんは中卒で就職していて、英語の勉強は独自にしていたことなども今回始めて知った。

どんなことがあっても笑いの対象になどなってはいけないとても素晴らしい日本人のひとりなのに・・・。

今回更に私を腹立たせたのは、この記事がとても小さいものでテレビでもほんの少ししか取り上げられなかったこと。

特に朝の情報番組では沢尻エリカだか何だかそんなものばっかりに時間を割いて、こういう問題を伝えなくて何を伝える為のテレビなんだ、と悲しくなってしまっ

こんな報道のあり方については英会話のメンバーもみな共感してくれ、特に先生は「自分はこの人を知らなかった。こういったことを大きく伝えることでもっとたくさんの人が被爆者や核兵器の事を考えるきっかけになるのに。」とおっしゃってくださった。

BBCはこの番組について苦情を呈したロンドン在住の日本人や、ロンドンの日本大使館に対して謝罪をしてきたそうだが、覆水盆に返らずというか、山口さんの遺族や多くの被爆者を深く傷つけたことはもう元には戻せない。

今年7月頃に山口さんのドキュメンタリー映画が公開されるそうだ。

核保有国でありながら被爆者を「不運な男」と笑ったイギリスで公開されるよう、製作者達は交渉を始めるそうだ。何も出来ない存在ながら心から応援したいなあと思う。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
まさかまさか、同じ人間なのに、広島・長崎の問題を〝空にキノコが二つ〟などと面白おかしく表現できるなんて!
報道に携わる人間に求められる品位のかけらもないですね。
(ダメです、ちょっと激しすぎました…)

ドキュメンタリー映画は是非見逃さないようにしたいと思います
日本人として、人として。

投稿: おけいはん | 2011年1月30日 (日) 15時52分

おけいはんさん、こんにちわ!
そうですよね、バラエティもクイズも番組としてテレビで放送するのであれば「報道」なんですよね。
どう冷静に考え直しても本当に許せない出来事でした。
でもこのニュースであらためて山口さんという人についてもう一度調べる機会を持てたこと、映画が今年公開されるのを知れたことだけがプラスだったと思います
私も必ず観に行こうと思ってます(また同じ映画館?)

投稿: ソックスモンキー | 2011年1月31日 (月) 10時53分

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