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三谷幸喜の「国民の映画」

もう10日ほど前の話しなのだけれど、久しぶりにお芝居を観にいった。
我が家は二人揃って三谷幸喜の大ファンなのだが、生のお芝居はなかなか観ることができなかった。
数年前に初めて「なにわバタフライ」を観て、戸田恵子のひとり舞台に大喝采を送った覚えがあるが、今回はそれに次いでのお楽しみ。
「国民の映画」だ。

宣伝ポスターによると小日向文世・石田ゆり子・風間杜夫などが出演するナチスが台頭してきた頃のドイツのお話のようだった。
三谷作品には常連の役者が多いが、今回はお互い共演初めて・三谷作品初めて、という役者さんが多いそうで、どんな感じなんだろうとワクワク。

大阪の森ノ宮ピロティホールというのは、大阪城公園の南東側の入り口のすぐ近くにあり、当日は「これからお花見しまっせー」という大学生の待ち合わせ・買出し集団で駅前やコンビにはえらい騒ぎだった。
コンビニの棚1列が急遽全て木炭売り場になっていたり、既にビールが大量に入っていると思われるクーラーボックスをわっせわっせと持っている子達がいたり、背中にギターを背負ってバッグにバドミントンを持っている子達がいたり・・・。
お芝居観る前から、大阪の子たちは何と元気に暮らしていることよ、とちょっと笑ってしまった

そしていよいよ「国民の映画」。構成は前半1時間位、休憩をはさんで後半は2時間近い長丁場だった。
なのにセット替えなし。暗転もないので、後半は役者さん達の台詞に引き込まれていくうちに、ストーリーが展開していくのを感じ、いつの間にやらラスト、というまさに三谷幸喜渾身の脚本、と言えるようなお芝居だった。

終始「あのお方」と呼ばれ、役柄では登場しないヒトラーという存在を常に感じながら、その時代映画などの文化・芸術も自由に表現できず、大臣が国家予算をつぎ込んで役者まで選んで国民の士気を上げる映画を作ろうなどと言い出すことが許される状況。
三谷脚本は、台詞がお茶目でわかりやすいので、役者さん達が大臣や軍人、俳優に扮して登場してシビアな言葉を発しても、話しは史実と違う面白い展開に進んでいくんじゃないかななどとつい思ってしまうほど。
そして今回はうまい!と思った役者さんは?と聞かれたら「全員!」と断言できる程素晴らしい舞台役者さん勢ぞろいだった。
その中でもやっぱり声がいいなあと思ったのは、風間杜夫・段田安則・白井晃の男優陣と新妻聖子嬢。聖子ちゃん、もう少し長く歌ってほしかったなあと思うほどの圧倒的な声量で魅力的な女優さんだなあ・・と
小日向さんはテレビで観るのと同じように小柄で柔らかい声なのに、裏の顔を持っていそうな、こずるさを持っていそうな、目を離せないキャラクターを存在感たっぷりに好演していた。
石田ゆり子は声はやっぱり細くて小さいけれど、とてもキュートで堂々と大臣夫人を演じていた。
更に、「消臭プラグ」のCMで、延々と殿様の格好をして歌ったり踊ったりしていたあの人(今井朋彦)も。登場時に思わず小声で「あっ、あの消臭プラグの」と言ってしまった
そして大河ドラマでお江の最初の夫役だった昭和な二枚目・平岳大は、三谷作品の必須キャラクターであるハンサムなのに実はすごいとんちんかんという役柄で登場。
お屋敷内で方向音痴になり、とんでもないところから出てきたり、若ぶってはみたが年齢詐称していた為、肝心なところで足がつって銃の発砲を止められなかったり、という場面を大真面目に、長ーい手足を大きく伸ばしてすっ転んだりしていた。

ストーリーについては正直うまく説明するのは難しい
宣伝大臣によって集められた俳優や作家、彼らを監視するためなのか呼ばれてないのにやってきた軍人やその他の人達が、うわべではパーティーに呼ばれて光栄、という言葉を発してはいるのだが、ナチスドイツ監視下の映画界でどうやって生き残っていくか、お互い牽制しあいながら、重苦しい何かを抱えた人々がストレスフルな会話を展開していく。
そしてアメリカが「風とともに去りぬ」を作ったのなら、わがドイツもそれ以上の映画作りを、という大臣の提案がどうなるかが話の肝かと思いきや、結末は全然違うところにあった。
どんなに献身的に主人に尽くしても、国の中で一番というほど映画文化に知識があろうとも、ユダヤ人というだけで明日からは虫ケラだと言い渡されるとは。
小林隆演じる執事フリッツが、最後に登場人物全員の史実に基づいたその後の行く末を読み上げるシーン。
ものすごく長くて正確性を求められる超長台詞。
でもこの人達、この時代、みんな真実に存在したことだったんだ・・・と観客が最後に実感させられる時間で、言い終わったあとひと時あって本当に大きな拍手が沸き起こった。
カーテンコールがあまりにも長く続いたので、多分予定外だった二度目のどん帳が上がった時に、小日向さんが恥ずかしそうにどんどん後方へ後ずさりしていくのが何だかおもしろく(だって主役なのに)

あらためて三谷幸喜と、作品の関わる役者さんたちのすごさを実感した素晴らしいお芝居だった。
時代ってなんだろう、国ってなんだろう、という事も、こんな時期に観たことでより真面目に受け止めようという気持になったような気もする。
三谷さんは今年50歳とのこと。まだまだこういった素晴らしい作品をたくさんたくさん世に送りだしてくれるだろうなと思うと楽しみだ。
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