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ジェーン・エアの人生

2週間位たってしまったけれど、今も映画のイメージが深く残っている『ジェーン・エア』。
イギリスの文芸作品の中でも世界中で最も知られている作品のひとつで、日本のどこの図書館だって学校の図書室だって必ず置いている名作だ
私ももちろん・・・中学校だか小学校高学年だかの頃に読んだし、自分の本棚にも確か長いこと収めていたような気がする。
けれど、今回数度目の映画化で、あらためて思い出しそうとしても、全くストーリーを思い出せないのだった情けない。

一方で原作者のシャーロット・ブロンテについては割と最近の思い出がある。
6~7年位前に、スコットランドでレンタカーをしてイギリスのヨークシャー地方や湖水地方などを車で回るという贅沢な旅をGWに決行したことがあるのだが、その時に一泊したのがブロンテ姉妹の住んだハワースという小さな町。
しかもブロンテの牧師館(お父さんが牧師なのでここがお家)の斜め前に立地する築150年のB&Bだったのだ。
ハワースはとにかく風が強くて、丘がたくさんあるから平地に住宅地が広がっている場所が少なかった。ロンドンとはもちろん全然違うし、オックスフォードやコッツウォルズなんかののんきな田園風景とも違うどちらかといえば陰の雰囲気のある地域という印象だ。
そして姉妹がずっと住んでいた牧師館は現在ミュージアムになっていて、彼女達の着ていた服や使っていた万年筆、原稿をたくさん見ることが出来る。
窓から見える庭の先には姉妹のお墓もあって、ブロンテ姉妹が間違いなくずっとこの土地の人だったと実感しながら見学した。
・・・と前置きが長いですが、その三姉妹の末っ子シャーロットが書いた『ジェーン・エア』のテーマはどんなものだったのか。
最新版のこの映画の端々でヒロインが口にした「自立」という言葉。
舞台は19世紀、そして作品も19世紀に発表されていて、この時代に女性が自立することがいかに異端だったか、そしてそれを小説のテーマとして発表してしまうことがどれほど衝撃的だったかが、いまなら何となく想像がつく。
19世紀のイギリスでは、地位も財産もある家の娘しか幸せな人生を得ることが難しかったというのは、最近BSで観た『いつか晴れた日に』(主演はエマ・トンプソン)でも観たし、不幸を背負った教養のある独身女性が住み込みの家庭教師になるというのも小説や映画で何度も目にした設定だ。
そんな時代に生まれたジェーンの生い立ちは・・・私のうっすらとした記憶では孤児院育ちのかわいそうな子、という感じだったが、元々は位の高い家の娘で、だからこそ品もあり、幼くても自尊心を持った少女だった。

両親が小さい時に亡くなったため孤児になってしまい意地悪な叔母に引き取られたことから人生マイナー街道まっしぐら。。。という不幸。
濡れ衣を着せられたり、クレイジーな従兄弟に暴力を振るわれたり、叔母にうとまれ問題児として孤児院へおいやられたという・・・大映ドラマのような幼少期なのだ。
孤児院でも聖母のような先生にめぐり合うことなどできず、ジェーン・エアは一人で大きくなったようなものだし、おそらく人を信頼することなど絶対しないと決めて成人してしまったのではないだろうか。
今回の映画では、こういったジェーンの生い立ちは比較的描写が少なめだが、そんな固くて絶対開く事のない蕾のような心を持ったジェーンが初めて自立した女性として開放され、ある領主のお屋敷に家庭教師として雇われ、自分の人生を歩いていく辺りを多く描いている。
もちろん映画の肝になるのは、雇い主である領主ロチェスターとの恋とその悲劇的な展開なのだが、私の印象に残ったのは、ジェーンがずっと「ジェーン・エア」でいようとする姿である。
そうなのだ。結婚し誰かの妻として生きる事になれば苗字はエアでなくなるのだが、ジェーンは長く辛い未成年の時期を耐え、やっと誰からもうとまれず、自分のペースで生きることが出来るようになったのだから、これからも自分だけを信じて生きていこう、と決意しているように感じられるのだった。
だから自分を愛してくれる男性との出会いも、孤独に生きて来た女性にとっては夢のような出来事ではないかと思うのだが、ジェーンは自分を相当説得して、凍結させてしまってた恋心を溶かすのにかなり時間がかかっているように見える
もう苦労しなくていい人生が目の前に提示されているのに、それでもジェーン・エアのままでいることと天秤にかけるなんて、どれほど人間不信なのかと思ってしまうが、それはこの映画の冒頭シーンを思い出すことでちょっと理解できる。
ロチェスターとの悲劇的な出来事のあと、彼の目を盗んで屋敷を逃げ出すジェーンが冒頭の数分間描かれるのだが、その領地の広いこと
走っても走ってもなかなか領地を脱出できない。近所の家もない。雨の中、芝と石垣と時々樹木、という広大な土地を無防備に逃げる。でもまだまだロチェスターの領地が続くのだ。
つまりこの時代の女性というのは嫁いだあとは人生の殆どを閉じ込めたような場所で過ごすのだ。
うーん、きっと当時この小説を批判した貴族の男性は多かっただろうなあ。

2世紀前の話しとはいえ、ジェーンの人生を見ながら、結婚に限らず女性の自立ってどういうことかとか、ひとりで生きていくことが十分可能になった現代は何が違うのかをあらためて考えてみたりするのに、過去の時代を見返すのは悪い事じゃないな、と感じた。
ところでジェーンを演じているのは『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカという憂いのある女優さん。
笑顔を殆ど見せず、心に秘めた芯の強さが表情からにじみ出るところが若き女性ジェーンという雰囲気にぴったり

すごく美人じゃないというのもジェーンらしくて・・と思いかけたところで、やっぱり原作もう一回読まなきゃ、と思った。

そしてそれをテレパシーで感じでか、一緒に観た友人(彼女の卒論はシャーロット・ブロンテなのだ)が、早速原語版と日本語訳の二冊を「読んでくださ~い面白いですよ」と貸してくれた

きゃー分厚いわ。英語版

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